M&Aの種類
発行済株式の譲渡
第三者割当
株式交換
事業譲渡
会社分割
M&Aコラム一覧



 

M&Aによる事業譲渡のスキームとしては、いくつかの手法、種類があります。
まずは一般的な発行済み株式の譲渡について説明します。

    発行済株式の譲渡はM&Aにおけるもっとも一般的なスキームです。

    保有する株式を譲渡することで、会社そのものを売却し、会社が有する資産、負債はもちろん、
    取引先との契約、従業員との雇用契約、会社が保有する許認可等、全て次の株式会社式保有者に移行
    させますので手続きが簡単です。

    この場合、買い手にとっては、簿外の債務があればこれも引き継ぐリスクもありますので、注意が必要です。

    手続き的には、株券の有無の確認や株式譲渡制限の有無を確認し、
    場合によっては事前に必要な処理をする必要があります。


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第三者割当

売り手の株式保有を残したまま、買い手が経営権を取得する方法です。

買手が投資する資金が会社に注入される利点があります。
また、創業オーナーの属性が会社経営に一定の影響がある場合、創業オーナーは実質的に経営権を失いますが、引き続き経営に参画いただくケースもあります。

第三者割当の場合、創業オーナーは創業者利得を得ることができせんが、
将来のIPOによりこれを取得するというスキームがあります。


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株式交換

売り手が保有している株式を、買手の会社が発行する新株と交換するスキームです。

買手企業としては、買収資金を準備する必要がありませんが、
交換比率の算定などで難しい交渉となる場合があります。

また、買手企業が上場会社であれば、交換して得た株式を市場で売却され、株価が低下するリスクもあります。

具体例としてみてみましょう。

平成29年3月、生産財、住宅建材、及び家庭機器の専門商社、株式会社山善(大阪市西区)が、
株式交換により産業用の自動化・省力化設備メーカーの東邦工業株式会社(広島市安佐北区)の買収を
発表しました。

株式交換の割当比率は、1:3,907(山善の株式1株に対して、東邦工業の株式を3907株割り当てる)で、
現在の東邦工業鰍フ発行済み株式総数が375株ですので、375株に割当比率3,907を乗じると
1,465,125株となり、且R善は東宝工業鰍ノ対して、且R善の新株を1,465,125株交付することになります。

株式交換による企業のM&Aは、売手オーナーに現金の代わりに買手企業の株式を供与するスキームです。
そのため、買手企業にとっては資金調達の必要がないメリットがあるといわれます。

一方で、双方の会社の株式価値を公正に評価し、株式交換の割り当比率を決める必要があり、
手続上の煩雑さもあるともいわれます。

ただ、この場合の株式価値の評価は、財務会計上の純資産すなわち株主持ち分を基準に
算定する方法を適用することであり、その手続きとしては大変意味があると言えます。

一方、株式交換によるM&Aは買手が上場企業である場合が多くなっています。

というのは、売手側としては、買手が上場企業であれば株式の換金性も担保され、
またM&Aによる大きなシナジー効果が見込まれる場合、受取った株式の価格が将来上昇する可能性もあり、
その場会は譲渡価格よりも大きな利益を得られることがあるからです。

さて、今回の株式交換の割当比率ですが、発表されている数字では、
山善側の純資産額が67,518百万円で発行済み株式総数が93,840,310、
東邦工業の純資産額が887百万円で発行済み株式総数が887株となっています。

その結果、一株あたりの純資産は、山善が719円、東邦工業が2,365,333円となっており、
この場合の株式交換の割当比率は1:3,287となります。

今回合意された割り当て比率が1:3,907ですから、双方の純資産が何らかの要因で
再評価されていることになります。

純資産が再評価される要因としては、例えば減損会計が適用されて損失の償却を行う、
あるいは含み資産を時価評価して益を計上したなどが考えられます。

いずれにしても、今回の買収により、山善は東邦工業に対して、山善の新株を1,465,125株交付するわけですが、
買収価格としては、この1,465,125株に現在株価1,023円を乗じるものと言えるわけで、
その数字は、約15億円ということになります。

東邦工業の平成28年12月期の収益状況を見ると、売上高832百万円、営業利益85百万円となっています。
減価償却費及び正味金融債務の額が不明ですが、仮に減価償却費が50百万円程度だとすると、
EBITDA(営業活動によるキャッシュフロー)が135百万となり、これに正味金融債務が2億円程度あるとすると、
買収価格はこのEBITDAの12.6倍になりますので、買収価格としては高い評価が付いているということになります。

尚、進行期については、前期において翌期の売上見込みである大型受注の製造に注力した結果として、
売上高 1,100 百万円、営業利益 195 百万円と見込んでいるとのこと。

その場合、EBITDAが250百万、正味金融債務が2億円程度程度とした場合、
今回の譲渡価格はEBITDAの6.8倍程度と換算されます。

この進行期の事業計画が、根拠に裏付けられ理路整然と示されている場合は、
このような買収価格も正当化されるということになります。あくまでも推定値は含んでいますが、
考え方として参考いただければと思います。


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事業譲渡

会社の事業の全部または重要な一部を譲渡するスキームです。
棚卸資産や各種固定資産の評価替えなど細かな手続きが必要です。

買手にとって、換金性のない資産や金融債務を引き継がなくても良い利点があります。
また、簿外の債務を引き継ぐリスクがありません。

ただし、会社が有する取引先との契約や許認可、また従業員との雇用契約などを、再度締結する必要があり、
相当の手間がかかることがあります。

許認可によっては取得に時間がかかる場合があり、
その場合は一定期間事業が継続できなくなりますので、注意が必要です。

また、商品や不動産の再取得には、消費税や不動産取引税がかかります。


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会社分割

会社の権利義務を複数の法人格に分割し、それぞれの会社に、人的組織、事業、資産を分割する方法です。

M&Aにおいては、譲渡をする事業をこの方法により会社から分割して別会社にし、
その別会社の株式を譲渡するスキームで、株式譲渡と事業譲渡の両方のメリットをとることを目的に
する場合が多いです。

尚、会社分割は、分割する会社の権利義務を、既に存在する会社に承継させる吸収分割と、
新たに設立する会社に承継させる新設分割のスキームがあります。

吸収分割の場合、承継会社からの対価として、現金、株式、社債等を受け取りますが、
新設分割の場合承継会社から受け取る対価は、新設会社が発行する株式または社債に限られます。








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