日本のM&Aの歴史
1900年代〜戦後
戦後〜90年代後半
現在
M&Aコラム一覧



 

日本において、M&Aが活発に行われるようになったのは、最近のことと思われている方が多いようですが、
実はそうでもない事実をご存知でしょうか。


長く遡ること20世紀初頭、後に財閥と呼ばれるようになる、三井、三菱といった非公開の同族企業群が、
官業払下げを含めた多くの事業買収を通して事業基盤を構築し、造船、炭鉱、金属などの工業化を推し進めました。

この、工業化初頭期に始まったM&Aは、実は必ずしも友好的なものばかりでなく、
欧米で行われているような敵対的買収や、経営議決権をめぐる議決権合戦まで繰り広げられたようです。


その後、戦前では電力業界での合従連衡、また第一次大戦期に急成長した鈴木商店は、
貿易商社として海外に拠点を確立する一方国内で買収を繰り返し、三井、三菱をも圧倒しました。

その後、鈴木商店は金融恐慌で破綻しますが、
その傘下企業はまたM&Aにより再編されることになります。


1930年代には、統合による規模の経済の実現を目的にした大型合併として、製鉄(八幡と6民間企業の合併)、
製紙(王子、富士、樺太の合併)、ビール製造(大日本麦酒と日本麦酒鉱泉の合併)等で再編が続きました。


またこの頃、財閥傘下企業の再編が進み、三菱重工、住友金属などが誕生しています。

また日産コンツェルンが傘下企業の株式公開と組み合わせた積極的なM&A戦略を実践し、
水産、石炭、金融等の分野において、欧米並みのコングロマリット戦略を実践したのです。

戦後、日本は反独占、過度経済力集中排除など、一転して企業組織分割の時代に入ります。
それまでに集中した財閥による産業組織は戦後改革の対象となり、財閥が解体され、
企業組織分割されることとなり、結果的に企業や金融機関によるM&Aが影をひそめる時代に入るのです。


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高度成長期以降バブル期まで、M&Aは低調な時代となります。

その背景として、高度成長期には、M&Aを引き起こす生産構造の劇的変化がなかったことがあげられます。

オイルショックをも、各産業で壮絶なコスト削減と円安の力も借りて結果的にこれを乗り切っています。
また、水平統合の抑制に機能した独占禁止法、戦後の日本企業に根付いた終身雇用制やメインバンク制など、
制度的要因もM&Aを停滞させて要因と考えられます。


バブル期に入り、日本企業による海外企業のM&Aが始まります。

これを後押ししたのが円高の急伸ですが、日本企業が資金調達能力を高めたのも一因です。
また、それまで海外企業の買収を妨げていた外為規制が大幅に緩和され、
またバブルによる株価の高騰もフォローとなりました。

しかし、これらの投資は結果的に撤退に終わったケースが多く、結局バブル期後半に起きた海外企業の買収は、
国内の特殊な金融市場に支えられた過度な経営判断であったことが否めません。


90年代の後半に入り、国内企業のM&Aが活発化します。

バブル崩壊以降、長期的な不況に入り、規模の経済の取得を目的とする水平統合、
取引コストの削減を目的とする垂直統合、過大な設備・負債・雇用に起因する事業再編など、
従来型のM&Aが増える一方、流通での規制緩和、ITや通信での技術革新に伴う新興企業の動きが
M&A増加の引き金になりました。

また、株式交換の導入や、持株会社の解禁などの制度的な要因も、M&Aの活発化を促しました。

さらに、高度成長期にM&A促進にブレーキをかけていた
メインバンク制や株式持ち合いの考え方 後退したことも、M&A活発化の一因として挙げられます。


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そして現在、M&Aの潮流はブームを通り越し、
今や企業の成長戦略を支える経営手法の一手段として定着化しつつあることを示しています。


現在のM&Aの特徴は、従来の水平・垂直統合によるシナジー効果を狙うスキームが引き続き多いですが、
中にはこれにこだわらない、より戦略的でダイナミックな発想に基づいたM&A、
選択と集中により大胆な方向転換を図るためのM&Aなどがみられることです。

一方、中小規模のM&Aが増加しているのも特徴です。

特に、団塊世代以上のオーナー経営者が事業承継の選択肢として、
M&Aにより第三者への事業譲渡を選ぶケースが急増しています。

経営基盤のしっかりしている会社に事業を譲渡することで、従業員の雇用を継続し、
また金融債務の個人保証から脱却できるメリットが評価されています。


また、最も新しい流れとして、複数の企業でIPOを進めるロールアップIPOに伴うM&Aなども注目されます。

ロールアップIPOは、同業種あるいは場合によっては他同業の未公開企業を
数社まとめて、株式を公開できる規模の1つの会社に組織編成し、この会社を上場させるスキームです。

一般的に、株式上場は相当の事業規模と差別化された商品力、そして継続的な収益力が必要であるため、
会社の創業オーナーが長い時間と労力をかけ実現させるものでした。

これを複数の会社を束ねることにより、
より短時間で創業者利得の獲得を実現できる方法として注目されています。








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