首都圏にある中堅運送事業会社で、売上は約100億円。
物流業界は、国内の製造業の空洞化による市場の縮小、規制緩和による競合激化、また人材不足などにより、比較的早い時期から事業再編が進んできた。
この会社も、大手電機メーカーの一部門より専属的に物流事業を請け負っていただが、その事業の衰退に引っ張られるように会社の売上も減少、多角化を目指し倉庫事業部門などへの投資を進めてきたが、会社の成長に大きく寄与するほどまでに至っていなかった。
そんな中、大手企業の物流部門や大手企業傘下の物流子会社が、大手物流企業に事業・会社を譲渡する動きが活発化し、中小の物流会社の経営環境がさらに悪化する状況となった。
この会社のオーナーは、もともと将来の株式上場を目指してきたが、この先上場ができる規模に成長させるには、まだ相当程度の時間がかかると判断、当社にM&Aによる事業譲渡の相談をされた。
そこで、早速会社情報、財務データを精査したところ、事業規模は大きくないものの、ここ数年安定的な利益を維持していること、また完ぺきではないものの業務上および財務管理上の内部牽制が比較的よく整っていることを確認した。
そこで、当社が国内エクイティファンド会社と連携して進めているロールアップIPOプロジェクトへの参画を提案、最終的に、現在の年間キャッシュフローの6倍の価格で継承いただくことで合意いただいた。
スキームとしては、約7割の株式をプラットフォーム会社に売却、オーナーは3割を保持したまま、引き続き代表取締役として業務を継続していただき、プラットフォーム会社は3年以内に株式上場を予定している。オーナーからは、あきらめていた株式上場がこのような形で実現され、本当にうれしいと感謝された。
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創業20年のセキュリティー関連のソフト開発会社で、売上約30億円。
顧客として大手上場会社資本の会社を多く持ち、創業時より将来の株式上場を目指してアグレッシブな経営を行ってきた。ところが、近年業界全体でエンジニア不足が顕著となり、この会社でも顧客より注文を打診されるものの、技術者不足でこれに対応しきれず、今後さらなる成長が見込めない状況になっていた。
このような状況の中、オーナーとしては、事業承継の方法として、多くの時間とコストのかかる株式上場に代わる手段として、M&Aによる事業売却を考えるようになり、当社に相談いただいた。 早速、事業モデルと財務データの精査を行ったあと、譲渡価格の協議に入った。その結果、当社から一定のレンジで現実的な目線を提案したところ、オーナーは明らかにチャレンジングな条件設定に固執し、当社としては懸念を表明したものの、結局当社を含め複数のアドバイザリー会社とのFA契約を結ぶことになった。
FA契約を結んだ各社は、買手候補の選定・コンタクトに入ったが、一部のターゲット(承継候補会社)に、複数のアドバイザリー会社からこの会社の案件が持ち込まれることとなり、いわゆる「出回り案件」としてのイメージが先行、M&Aの案件としては価格設定を含め大変難しい状況となった。
そんな中、事業譲渡の手続きに入っていることが従業員の耳にも入り、以前よりオーナーのアグレッシブな経営スタイルに不満を抱いていた社員数名が、申し合わせて退職し、他社に転職する事態となった。
結果的には、これが案件として決定的なダメージとなり、譲渡を一旦凍結せざるを得ない結果となった。
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